更新:2001/10/15
かねやん企画
本棚の片隅
まんが談義

回 画質の重要性

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まんがの画質って重要でしょうか?
さて、今回はまんがにおける画質についてのお話です。
皆さんは、漫画を読むときにどの程度画質にこだわっているでしょうか?
最近の人気作家さんたちはアニメ世代のため、昔に比べるとアニメ的絵柄が多い様に思われ、また、画質も素晴らしい方々が多くなってきていますが、だからといって「まんが作品」として素晴らしいとは限りません。「まんが」文化における画質っていったいなんなんでしょうか?
「まんが」というメディアの本質ってなんだろう?
「まんが」というメディアが他のメディアに比べて優れている点、又は、最も特徴的な点とは何でしょうか?
私は、作者の手による「画質」が直接読者の眼に触れることだと考えています。
小説の様に「作者原稿」が「活字印刷」に変るようなメディアでは、作者の自筆の文章などは編集者しか眼にする事は無く、よって文章表現や構成、内容などで良し悪しが判断されますが、「まんが」に関して言うと、作者が描いた原稿を読者は直接眼にする事になり、構成や、内容とともに、作品を構成する重要な要素となっています。
よって、作品の画質は高いほど良いとなるのですが、実は、まんがの表現において、画質の優劣は作品の優劣とはイコールにはなりません。
まあ、こんな事は私が言うまでも無く当然皆さんも分かっている事だとは思うのですが、ただ、だからといって作品の内容に対して、画質がどんなものでもかまわないとは限りません。
近年のまんがの傾向としては、基本的に画質が高い作品が多くなっていますが、本来、漫画に描かれる人物や物体は、作品中でその感情や状態を表すための記号であり、それらを表現すれば十分に事は足りるのです。
それでも、画質が高いことが良しとされるのは、リアリティー性の高い作品などで、感情移入をする場合、それらの記号が現実により近い方が、読者が情景をリアルに受け止めることが可能なためです。
反対に言えば、リアリティー性が低い、又は、リアリティー性を排除したい、ギャグ系やファンタジー系では画質はそれほど重要ではない事になります。
作品中での記号をどう使用するのか?
私が知る限りでは、キャラクターや物体を記号の意味合いで作品に上手く取り入れられている作家さんとしては「たがみよしひさ」さんが挙げられます。
たがみさんの作品はギャグ、シリアスドラマ、ホラー、SF、ファンタジー、等々多岐にわたりますが、これらの作品中でも、意図的に2頭身キャラを使用し、ギャグ的イメージを出す所もあれば、通常の人物表現&情景描写でストーリーを展開するところもあり、それぞれの画質を使い分けて、メリハリの利いた作品を多く発表されています。
この事から分かるように、画質はある程度作品の内容を縛ってしまう物ですので、作者の方々が作りたい作品にあわせて画質を極めていると考えられます。
漫画の御大である手塚治虫さんの画質は、現在のまんがの画質レベルで言うとそれほど高いものではありませんが、まんが作品としては、皆が認める名作ぞろいです。ただ、手塚治虫さんがあの絵柄にこだわって作品を作りつづけておられた事はあまり知られていないと思います。あの絵柄で描いておられたのではなく、あの絵柄を描いておられたのです。
手塚治虫さんはそのビッグネームから海外でのイベント等に参加を要請されることも多く、そんなときに宣伝用ポスターも手がけておられたようなのですが、手塚治虫さんが自身以外の作家さんのキャラクターを200以上も使用しポスターを描かれた事があったそうです。しかも、それらのキャラクター達はほぼ、オリジナルのキャラクターの画質のままであり、手塚治虫さんの画力と、他の漫画の研究をされていたことが分かったというエピソードがあるそうです。
このような実力を持ち合わせながら、あえてあの画質のまま作品を作りつづけられた意味は私にはわかりませんが、あの絵柄で描かれた作品が手塚治虫作の証明であることには間違い有りません。
でもやっぱり・・・
上記のように確かにまんがの文化的表現として画質はそれほど重要なファクターではないのですが、私個人としてはやっぱり、画質は良いほうが良い様に思います。
なぜ、こういう結論になるかというと、最近のギャグ系の漫画の多くの画質があまりにあまりなためです。
デビューしたての新人等ならまだしも、れっきとした連載作家さんの中にも、ちょっと私の理解の範疇を超える画質のものがあります。当然、わざとこうしておられるとは思うのですが、まんが作品の画質として記号はシンプルで情報量が少ないほうが理解のスピードが上がる事を考えると、なぜこのような方向に走る必要があるのかが理解できない事が多くなっています。
やっぱり、感性が古臭くなってるのかなぁ・・・・・・・

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